DXにかける期待とは
従来、建築というものは、建築を依頼する立場から見るとよくわからないものでした。
高いお金をかけるにも関わらず、金額の妥当性がわからなかったり、理想とする建物を建てるのはどうしたら良いか、どこの会社なら信頼出来て、どこの会社で何ができるのか、そしてその情報をどうやって仕入れたら良いか素人から見ると建築にまつわる悩みや課題はつきません。
また、建築をする上で、多様な会社が関わり合うという複雑性があり、それがコストが膨らむ要因になったり、瑕疵(建築不良や設備故障)を生んだり、工期遅れを生み出します。
私は今現在、「人材」「建築リスク」「複雑な利害関係」の3つのテーマに分けてDXを考えており、DXはそれらを解決できると考えています。
人材のテーマ
職人の高齢化により、技術断絶が良く挙げられていますが、私は若い世代の台頭により新たな考えが生まれることを期待しています。
いつの時代も閉塞感や進歩が停滞すると新しい概念ややり方が生まれてきました。古い話でいえばミニ着物がそうだと思います。建築業界においてもBIM、メタバース、IoTなど様々な技術革新が生まれていると思いますが、技術革新だけではなく建築サービス革新も発生しておかしくないと考えています。
誰しも自分が働いている業界が悪い方向に進んでほしくないと思います。なんとかしたいと強く思い、それを実行する強い意志を持った人間が新しい何かを生み出し、たとえそれがうまいかなくても、数年後などに誰かがそれを引継ぎ続けていき変えていくのだと思います。
そうして誰かが常になんとかしてくれるわけですから、人材の課題についても悲観したものではないと、当社と協力関係にある業者の方々を見ていてもそう思います。高齢化や人材不足に目を向けるだけではなく、いま働いていて、これから活躍していこうとしている若い世代がどう自分を実現していくかに目を向けて考えていきたいと思います。
建築リスクのテーマ
建築というのは素人である私から見ると高いお金をかけるにも関わらず、妥当性がわからなかったり、理想とする建物を建てるにはどうしたらよいか。どこから情報を得たらよいか。
やりたいことは見えているのに方法が見えないものだと思っています。こうした課題を解決する場所が出来たら建築はサービスとしてもっと素晴らしいものになるのではないかと思っています。
少なくとも心理的なハードルを下げることは「シェア」や「いいね」という概念を持つ若い世代に対して重要なことだと考えています。
複雑な利害関係のテーマ
建築会社に入ってまず驚いたのは、ステークホルダーが多く複雑であるということでした。街で建築現場を見かける場合は、トラックを搬入するところだったり、交通整理をする人がいたり、という場面が多いと思います。
関わる人が多いのは予想していましたが、想像を遥かに超えた複雑さを感じました。ステークホルダーが複雑ということはお金の動きも複雑ということです。ここだけ切り取ってみても挑戦しがいのあるお題だと思いませんか?
AI、IoT、RPA、iPaaSなど様々な技術を駆使して改善をしていくチャンスだと思っています。昔であれば「面倒くさい」「やりたくない」という言葉は愚痴だから言ってはいけないことでした。しかし、デジタルトランスフォーメーションの時代では、効率化をするきっかけになる良い言葉だと思います。
今回のまとめ
人それぞれDXにかける思いや建築業界に感じる問題点は違うと思いますが、追求していくポイントは悪くないと考えています。
なんだか問題点ばかりで不安に感じる人もいると思いますが、江戸時代はワイロありきで仕事が進んだわけですし、中世ヨーロッパでは、食事でケガをしたり死人がでることもよくあったわけですよね。
いまの世の中に不満がある人は多くいると思いますが、では大昔は不満を持つ人がさらに多かったのでしょうか?私は違うと考えています。不満とは、改善する余地がまだある、伸びしろがまだあるというシグナルだと思います。DXはそれらのシグナルを察知して、利益に結びつけることが重要なカギだと考えています。